生体影響を計測できるバイオエフェクトセンサ

エキスパート

氏名:開示前


バイオセンサというと、生体内の特定の物質を計測するイメージがありますが、ここで云うバイオセンサとは、生体影響を直接計測できる BioEffect Sensor を指します。通常、生体影響を計測するには、実験動物や培養細胞/組織に試験物質を投与し、バイオマーカーが好ましく無い値にどの程度振れるかで、影響の有る無しを判断します。その為には、バイオマーカーの抽出作業や高価な計測機器が必要だったりします。しかも、種々のバイオマーカーが変動するので、個々の結果は明確でも、総体的にどの様な影響が有ると結論すれば良いのか、とても困ることがあります。
 高価な計測機器が無くても、かくかくしかじかの生体影響が有ったと、もっと簡単に計測できないものでしょうか? それを可能にするのが、BioEffect Sensor です。 原理はとても簡単です。生体影響を計測できる電子素子上に、直接細胞を播種し、in vivoを模した標的組織を構築します。標的組織の活動は、電子素子によってReal-Time & On-Line で電気信号として計測されます。試験物質によって標的組織が傷害/変調を来すと、細胞の形態や活動が平常とは異なった状態に移行しますから、それが信号の変化となって検知できます。高価な計測機器は必要有りません。
 そんなに簡単に行くものか?と怪訝に思われる方もいらっしゃるでしょう。確かに、幾つかの技術的課題を解決しなければなりません。

1)絶縁性の確保
 細胞を培養する訳ですから、電子素子との絶縁を確保しなければなりません。しかし、電子素子が構築組織の活動を感応できなくする/遮断してしまう絶縁膜では困ります。

2)細胞接着性の賦与
 そもそも電子素子の表面には、細胞が接着する為の足掛かりとなる 細胞接着リガンドがありません。そのままでは、細胞は電子素子上に安定して接着することはできませんし、益して人工組織の形成は無理です。動物組織から採取した細胞外マトリックス(ECMs)を塗って、ECMs が持つ細胞接着リガンドを、代わりの足掛かりにすることは可能ですが、問題があります。そもそもECMsは、電子素子との親和性を高く維持しつつ分子進化した訳ではありません。偶々、電子素子表面の疎水性ポケットに、ECMs の疎水性基が感応して結合したに過ぎません。その結合は不安定で、培養途中で剥がれることも有り得ます。高分子蛋白なので、変性しない様に細心の注意が必要ですし、一般には高価です。
 解決策は、疎水性の側鎖(例:フェニル基)と反応基(例:無水マレイン酸)の側鎖を持つ直鎖状のビニルコポリマーに、細胞接着リガンドを化学結合させた“化学合成マトリックス(擬似マトリクス)”を活用することです。多数の疎水性側鎖が電子素子との疎水結合を安定化させ、もう一つの側鎖、細胞接着リガンドが細胞接着の足掛かりを与えます。詳しくは、経験内容3,及び、特許第4555773号をご覧下さい。

3)パッケージ化
 BioEffect Sensor は使い易くなくてはなりません。その為には、電子素子を microfluidicsにパッケージ化する必要があります。その後、化学合成マトリックスで電子素子の細胞接着面を改質し、細胞を播種して標的組織を形成すれば、でき上がりです。室温に2-3日放置しても細胞が死ぬことはありません。37℃に戻せば、再び正常な信号を出します。即ち、パッケージ化することで、生産者とユーザーを分けることが出来、ready-to-useな製品として、通常の物流に載せて届けることが可能になります。

■その他
地域: 茨城県つくば市
役割: プロジェクトリーダー
規模: 国立環境研究所

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氏名:開示前

元々は、大気汚染物質の健康影響を研究する過程で、in vivo を模した精緻な肺胞上皮組織を in vitro で再構築し、生体影響評価に用いようとして、この分野の研究を始めたのがきっかけです。偶々、 de novo で形成された基底膜構造体を備える肺胞上皮組織が構築できたことで、培養肺胞上皮細胞による基底膜の形成に関するサイトカインの支配や間充織細胞の関与について、一連の研究を行いました。更に、ヒトrLN-10/HEK293 細胞を用いることで、上皮組織の一般形、 hLN-511 isoform の基底膜構造体が再現性良く作製できるようになりました。 この基底膜構造体を培養基質 (sBM:synthesized Basement Membrane substratum) に加工する技術を開発し、精緻な人工上皮組織を再構築する素材として使う研究や、未熟な幹細胞から成熟した機能細胞に最終分化させる一連の研究 (→→ functional hepatocyte, islet beta cell, ciliated cell, neuron) を進めました。
 これらの過程で、細胞培養に関する種々のトラブルに遭遇し、一つ一つ解決して現在に至っています。そんな経験が皆さんのトラブルシューティングに役立つことも有るのではと考え、今回登録することにしました。 論文の M&M に記載されたプロトコールに従って実施したつもりでも、上手く行かないのが常です。トラブルを自分で抱え込まず、年寄りの知恵を借りるつもりで、ご相談下さい。


職歴

職歴:開示前


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