設計者視点での医薬品・食品工場での殺菌及び防虫対策について話せます
■背景
1996年12月に、6物件目の担当プロジェクトとして、医薬品工場を一手に引き受けていた大先輩から、医薬品工場を担当しないかと打診があり、人生において関わりが無かった治験薬固形製剤製造工場新築の設計を任された。それもそのはず、医薬品製造施設は運用が開始されると関係者の立ち入りが厳格に管理される施設。また、それまでは医薬品メーカー内の施設管理部内に設計部があり、そこで建築・構造・設備の実施設計までが行われ、外観の化粧直しのみが外部の建築設計者に委ねられていた。ところが、私が担当することとなった時代から、どの医薬品メーカーでも社内の施設管理部内の設計部不要論が叫ばれるようになっている、正に過渡期であった。構造設計や設備設計は施工会社の力量に頼っていた部分が大きいが、内部のゾーニング・人/物動線・防虫等異物混入対策という基本から、ドアのディテールに至るまで哲学とも言えるロジカルな目的に立脚した設計が建築設計者には求められており、突然現れた私に何が出来るのかと言われたのがクライアントの建築設計職能の方との最初の出会いであった。しかし、限られた方しか使わないとはいえ、それまで培ってきた建築への愛を失うことなく、胆力を持って議論を重ねるうちに、クライアントの建築設計職能の方だけではなく、設備設計職能の方とも意気投合し、結果様々なノウハウというよりも『設計における全ての理由付けについて考え抜く姿勢』を教わり、クライアントに育てられた建築設計者と言っても過言ではない、医薬系建築設計者のスペシャリストとなっていった。もちろん数々の新薬メーカーにもそれぞれ違った哲学があるが、決まった形に拘るのではなく、考え方を摺り合わせる私の姿勢は常に好感を持って受け入れられ、一般的に設備設計者がプロジェクトマネージャーを担う傾向にある中、建築設計者である私がプロマネを担いリードするという希少な設計者となった。
■話せること
●困っている既存施設の問題点と新築計画で配慮すべき事項
虫の混入原因は、内部発生/持込/侵入に大別される。製造工場は宇宙ステーションではなく、ロケーションや周辺環境は言うまでもなく、それぞれ、湿気や漏水といった水分が起因する点、人が容易に侵入出来るほど虫も容易に侵入出来る点、さらには建築の常識的ディテールに起因する点が挙げられる。それ故、ユーザーが求める環境を鵜呑みにするのではなく、ロジカルに紐解き、ニーズと照らし合わせながら現代の技術を丁寧に吟味し適用する必要がある。
●行うべき調査と適切な解決方法
虫にはそれぞれ特性があり、虫の専門家による種類の特定とその習性を理解した上で、殺虫業者による一時的な解決を行うのではなく、対策時期など狙いを定めた解決策が有効である。
●建築材料の選定とその妥当性
さらに近年では、虫だけではなく菌やウィルスの除去の必要性が叫ばれ、建築材料との整合性を無視した安易な殺菌技術が提案されてきている。抑々、理想的とされてきた医薬品工場内の仕上材料は、清掃性や耐薬品性と共に経済的及びメンテナンス的側面からも考え抜かれた材料である。しかしながら、先に述べた殺菌技術の安易な適用により、内装材が信じられないダメージを受けてしまう事例が頻発している。高価な内装材に切り替えて最新の殺菌剤を適用する必要があるのか、また範囲を限定するのであれば、差圧管理による空気の流れも考慮して慎重に採用することが求められる。
●建築設計者による総合的な判断の必要性
ユーザーの空間性能や利便性に関するニーズ、設備的な高度なスペック要求など、相反する要件が絡み合う事となるため、建築設計者主催で、異なる専門家による合意形成が必要である。
■その他
●メーカーの技術資料に頼り切るのではなく、様々な検証を実施してきました。
・外部照明の種類による誘虫性に関する研究(論文発表あり)
・実際に使用する薬品による仕上材料の曝露試験の実施(メーカーの評価と違う結果有り)
プロフィール 詳細を見る
職歴
職歴:開示前
このエキスパートのトピック
-
医薬品・食品工場での適切な外装材選定方法について話せます
¥60,000~■背景 ・日本を代表する医薬品メーカーの様々な用途の施設建築を建築設計者の立場で、企画から実施設計、工事監理まで担当してきました。目指すべき目的はGMP規範により同じですが、医薬品メーカー毎にそのゴールは様々であり、そのゴールに至る考え方のプロセスが失われつつある状況です。原因は明確で、建築設備設計者及び施工者への責任委譲と設備エンジニア会社への責任委譲が企業のリスク回避手段として有効であるとの誤った品質放棄が推進されるようになり、肝心の建築計画全般にはコスト低減のミッションが主たる目的となり、その検証(建築のバリデーション)も蔑ろにされる傾向にあるからです。もちろん、監督官庁にも言える話です。 ・食品工場においても、GMP規範をHACCP規範と置き換えるだけで、同様の事が言えます。 ・結果、今回のアドバイステーマにおいては、明らかに間違った決定がなされ、近年の当該施設建築の外装工事が行われているケースが多く見受けられます。 ■話せること GMP規範に基づく医薬品関連施設に求められる目的は言及するまでもなく異物混入阻止です。建築物は宇宙ステーションではなく容易に人が出入可能である事から、虫や埃(それに付着している菌・ウィルス)も確実に侵入してきます。この出入口に関連する対策は、別のタイトルに譲り、一見問題と思われがちな外壁自体からの虫等の侵入阻止に関する知見をお話しします。 ・建築物は宇宙ステーションではないため、それ程の気密性能を有している訳ではなく、人が隙間と思えない程の隙間を利用して、侵入若しくは生息の場となり得ます。 ・鉄筋コンクリート(RC)外壁:気密性最高、高価、長工期 ・ALC等パネル外壁:気密性高、安価、単工期 ・断熱系金属パネル外壁:気密性低、超安価、単工期 ■注目ポイント ・良く言われるパネル工法による気密性の嘘 ・コストを分ける社会的ニーズとしての断熱性能 ・断熱性能担保の必要性と工期の問題 ・メンテナンス性の真実
-
医薬品・食品工場での適切な内装材選定方法について話せます
¥60,000~■背景 ・日本を代表する医薬品メーカーの様々な用途の施設建築を建築設計者の立場で、企画から実施設計、工事監理まで担当してきました。目指すべき目的はGMP規範により同じですが、医薬品メーカー毎にそのゴールは様々であり、そのゴールに至る考え方のプロセスが失われつつある状況です。原因は明確で、建築設備設計者及び施工者への責任委譲と設備エンジニア会社への責任委譲が企業のリスク回避手段として有効であるとの誤った品質放棄が推進されるようになり、肝心の建築計画全般にはコスト低減のミッションが主たる目的となり、その検証(建築のバリデーション)も蔑ろにされる傾向にあるからです。もちろん、監督官庁にも言える話です。 ・食品工場においても、GMP規範をHACCP規範と置き換えるだけで、同様の事が言えます。 ・結果、企業リスクになりかねない従業員の意識向上が進まず、むしろ設備頼みの意識低下をもたらしています。 ■話せること このトピックでは、内装材の適切な選定方法に絞り、それを怠った事による重大事故事例についても言及します。 ・防水性評価:短絡的な防水性能ニーズがもたらす、漏水事故後の修繕の難易度 ・耐薬品性評価:メーカーカタログ上、当該性能が充実してきていますが、ほぼ違った結果となり事がある等 ・清掃性評価:一般的な設計者及び施工者が考える気密性に対する納まりと施設に求められるべき納まりが違う ・更新性評価:ある性能に特化した高性能な建材ほど高価であるが、一方で更新性の難易度が高い ■その他 ・30件以上の新築・改修工事に携わっています。 ・当該問題は、社会問題化しかねないため、原則公開されることは無い。