音響学的アプローチによる植物生育制御と病害虫防除について話せます

エキスパート

氏名:開示前


■背景
農薬の利用場面では、化学農薬や生物農薬とともに物理的手法(光や音・振動など)を併用した総合防除技術が開発されてきました。病害虫の総合防除(IPM)の概念は、過去50年以上にわたって研究開発されてきた経緯がありますが、病害虫に対する音響学的なアプローチは不明な点が多く、半翅目害虫種(ウンカ、コナジラミ類など)の配偶行動における交信攪乱(基質振動による定位行動の攪乱など)、蛾類に対する超音波による防蛾技術などで実用化研究が進んでいます。

音響学的なアプローチは、農業生産の場面においてはホスト植物を介して発現されます。その際、植物体も音響を感知しており、その特異性(組織部位や音響周波数、強度など)によって、様々な応答を引き起こすことが知られています。農業生産現場への音響学的アプローチの適用には、植物体が持つ防御機構の分子基盤との関係性からメカニズムを明確にしていくことが必要と考えられます。

■話せること
近年、音波振動が、他の機械的刺激(風、雨、接触、振動など)と同様に植物の成長と発育を調節する外部刺激として注目されています。2014-2021年にかけて植物体の音信号シグナルの細胞内メカニズムが明らかにされ、農業分野での実装に向けた研究開発が進んでいます。植物の生体音響学メカニズム研究の動向および農業分野における社会実装に向けた取組みについて総括します。植物が本来有している生理学的機能を音響学的に活性化することで化学合成品に依存しない、環境調和型の農業の実現が期待されます。

既に、人工的な音波振動処理による植物に対する効果が明らかになり、細胞内分子レベルのメカニズムが解明されつつあります。植物の応答例としては、1.種子の発芽と成長促進、2.防御応答の誘導(病害抵抗誘導など)、3.非ストレス耐性の誘導、4.熟成、老化の攪乱遅延、5.光合成能の強化、6.マイクロバイオーム(微生物群集構造)制御の6つの事例が挙げられます。

さらに、音波振動は、昆虫の配偶行動にも密接に関係しており、交信攪乱による密度抑制が期待され、害虫防除技術としての利用が検討されています。また、鱗翅目害虫などの摂食行動(食害)によって引き起こされる咀嚼音振動が植物に化学的防御応答を誘導することも報告されています。植物による音響シグナルの知覚は、生殖成長におけるバズ受粉でも確認されています。マツヨイグサの花は、訪花する授粉者の羽音に反応して機械的に振動し、花蜜糖濃度を増加させることが観察されています。花の振動と花蜜糖濃度の増加は、いずれも特定周波数に固有であることが明らかにされています。

■その他
イネの重要害虫であるトビイロウンカの配偶行動における交信攪乱による防除技術の開発を経験しています。また、コナジラミ類の摂食後のウイルス感染や病害発生をホスト植物の持つ病害抵抗誘導能の活性化の観点から殺虫殺菌混合剤の開発も経験しています。

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氏名:開示前

農業は今大きく変わろうとしています。化学合成品一辺倒の生産から作物(植物)が本来持っている免疫機能や、植物体を支えてくれる土壌と、そしてそこに生きる「多くの微生物集団」の力を活かす農業が注目されています。植物-土壌-微生物を大きな共生体として捉えることで従来とは異なる視点から機能性資材の開発が可能です。パラダイムシフトするためのアイデアを提供します。


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