カーボンニュートラルにおけるエネルギー変換機器の最新技術動向について話せます
■背景
蒸気タービンが全盛で、産業用ガスタービン(GT) のタービン入口温度( TIT)が900℃であった時代の1978年TIT1300℃の国家PJ高効率GTが開始された。私は高効率GTのタービン翼冷却技術の研究を実施するとともに試作高効率GT全てのタービン冷却翼設計を実施した。実験機は1987年に1年間の実負荷運転を行い試験後検査で無損傷を確認した。
MHIはこの成功を元に、小型MF-111GTを開発した。私はMF 111GTに最新の翼冷却技術の適用を試みた。しかし精密鋳造技術、フィルム冷却孔加工等では当時の日本の低レベルで製作せざるを得なかった。GTを開発するためには材料、製造・加工、構造解析、寿命評価など幅広い深い技術に精通する必要があった。航空用に比べ最新では無いが、MF 111はコジェネにマッチしてヒット商品となる。
MHI はWH社製1150℃級D型GTを主機としたコンバインドプラント(GTCC)を開発。東北電力で世界初の運用が始まり世界的なGTCC需要の先駆けとなる。熱効率48%(LHV)総出力119万kW。しかしWH社の翼冷却技術は低く第一段動静翼に損傷が発生。私はTITを50℃上げた1200℃級DA型冷却翼を開発した。DA型は信頼性が高く、勿来の石炭ガス化GTにも使用された。
コンバインド発電という省エネ機器の開発でスタートしたがその後の地球温暖化問題との関連から、日本のエネルギー需要と供給、コンバインド発電以外の発電技術、再生可能発電技術、家庭用太陽熱利用技術、各種熱サイクル、省エネ製造技術などの調査研究を長年に渡り独自に行っている。
MHIは1350℃級F型GT、1500℃級G型GTを開発した。私はこれらMHIの全てのタービン冷却翼を設計した。またMF-221GT開発のプロマネを努めた。2004年に阪大に移った。丁度その年国プロ1700℃産業用GTの研究開発が始まり、MHIー阪大で共同研究を開始した。成果は1600℃(後に1650℃)級J型GTに適用された。MHIは2018年GE社を抜いてGT売上1位となる。最新のGTCCの熱効率は63%(LHV)でCO2排出量は石炭火力の1/3。地球環境問題に多大に貢献している。
MHIの研究所に所属していたことから、産業用ガスタービンに限らず、軽水炉、高温ガス炉、核融合炉、ロケットエンジン、宇宙往還機(HOPE)、ミサイル、太陽光集光発電、冷凍機、熱交換器、製鉄機械、パワーIC冷却、断熱技術などなど熱に関係した製品の熱技術に精通している。中でも航空宇宙製品は統括を勤め、H-Ⅱ、H-ⅡA, H-ⅡBロケットエンジンの開発、トラブルの原因究明と改良設計を行った。H-ⅡAロケットの45号機連続打ち上げ成功に寄与している。(6号機はSSBのトラブル。)
■話せること
エネルギー変換機器の開発手法とトラブルの原因の追求とその解決方法、さらに最適な検証方法である。さらに研究職・専門技術職育成の教育。
産業用ガスタービン(GT)は公共インフラに係わる機器である。故にタービン動静翼は5万時間の寿命が要求される。50km/h走行の自動車のエンジンは2000時間で10万 kmである事を考えると産業用GTは民生機器に比べて 一桁高い信頼性確保の設計が必要である。また航空用GTとは違って出力が大きく試作エンジンの長時間試験を行って問題点を改良する開発手法が取りにくい。
以上の背景を持った大型産業用GTの冷却翼は、 まず全て思考で開発する必要があった。冷却翼を構成する冷却構造を伝熱要素に分解して、各伝熱要素の実機相当の性能を把握し、これらのデータを元にタービン冷却翼解析システムを構築し、これを用いて設計する。さらに実機データを反映し精度の向上を図った。この手法が新製品開発・不具合解決に威力を発揮する。
私は冷却翼開発に必要な伝熱データで、公知データについては、考える最高精度の測定手法で確かめ、未発表データおよび新考案の冷却構造では実機と相似な精巧な実験装置を製作して現象の観察と定量データを取得した。以上より自身で開発した純国産技術を用いて全てのタービン冷却翼を開発したため不明な箇所がない。
タービン翼冷却技術は超局所の伝熱制御技術であり、ターボ機械を知り尽くさねば高性能で信頼性の高い製品開発は不可能な技術である。超高温超高圧高速の非定常流下の回転運動を伴う非常に複雑な現象であり、未だ世界の最先端研究分野である。この技術の波及効果は大きい。
1700℃に至るタービン冷却技術を自ら構築したため、伝熱技術に精通している。また熱工学の実験・解析手法・計測手法の指導および応用面では省エネ技術、高効率エネルギー変換、環境問題などを教授することができる。