発明者にインタビューを行い気づいていない発明を明確化し他社に有効な特許ポートフォリオを構築する出願権利化を行います

エキスパート

氏名:開示前


私は約17年に渡り、ブラザー工業株式会社にて、知的財産(以下、知財と略します)、特に特許についての戦略を立案し、それをどのように実践するか、技術者と知財担当者との間に立ち、推し進めてきました。

 前職の主製品であるプリンタ分野は知財のトップランナーの出願数が多く、自社でもそのトップランナーに見合った出願数を目標としていたため、なかなか目標件数に達せず、設計者は実用化が難しいと思われる案件も出願希望として知財部に提出していました。しかし、知財部担当者は技術内容についての専門知識が十分ではないことから、案件の軽重に関わらず同様の労力を掛けて出願せざるを得ず、知財部に負荷が掛かっていました。
 そのため、自身が平成5年よりレーザプリンタのエンジン開発部門での特許担当専任になったのを機に、開発部の各チーム(他社でいう課に相当)で担当者を選び、出願希望の際には担当者に案件のレビューをさせ、出願要否の意見や、自社技術であっても他社にも適用できる内容にする意見などを付加した上で知財部員に伝えるように業務の仕組みを変えました。
 それにより知財部で出願の際の優先順位を付け、他社が侵害する特許の権利化を目指す出願・自社の設計自由度を担保すべく権利化を目指す出願・開示目的の出願・出願しないもの、など峻別できるようになり、知財部がより重要な案件にリソースを割くようになりました。

 また、平成21年4月に組織変更により開発企画部が発足したのに伴い、自身が所属していたレーザエンジンの知財チームはそちらに異動、レーザプリンタのエンジンだけでなく、レーザプリンタ・インクジェットプリンタ両方の開発側での知財全体を担当することとなりました。10月にはそのチームマネジャー(課長級)に昇進、4名の部下をマネジメントしながら、レーザエンジンにおける事業戦略に沿った知財戦略をインクエンジンやハード、ソフト開発者にレクチャーし、他社に対して有効となる可能性の高い特許出願を行うよう導きました。
 
 この事業はどうやって勝つのかという事業戦略・その事業戦略に沿った技術開発を行う技術開発戦略・そしてそれら事業戦略、技術開発戦略とリンクした知財を行うことで、その事業で勝つための開発した技術を守る知財を実現するというのが、特許庁が薦める知財戦略である“三位一体”ですが、部下も三位一体についてしっかり理解しており、自社の強みの事業戦略・技術開発戦略に沿った知財戦略に基づいた発明抽出、他社を先回りしたテーマの創出による出願指導を行ったため、チーム内での具体的活動の情報共有により知財戦略をチームで更新し続けることができ、より質の高い出願を行うことが可能になりました。

 更には、設計者は往々にして感覚で設計している部分があるため、自分の設計が発明だと気付いていなかったり、オーダーに対して当たり前に設計しているだけだと思って特に発明だと思わなかったり、設計についてうまく言語化できず発明の価値を説明できなかったりする傾向があります。そこで、設計者にインタビューを行い、まず、新しく設計した箇所をリストアップさせ、次に、何故そういう設計にしたかを丹念に聞き出すことで進歩性を見出し、その情報を付加して知的財産部の担当者に渡すことによって、審査に耐えうる出願ができるようにバックアップしました。

 また、知財部が進歩性希薄と判断したものの意義があると思われる技術については、新たな効果を考えた明細書ストーリーを構築して知財部にその内容を提案するなど、出願数を減らさない工夫をするようチームで対応しました。
 それらいくつかの施策により、意味のある技術内容のもののみで、効率的に、知財部が考える必要出願件数を確保できるようになりました。

 知財は知財のためではなく設計自由度を上げるためのものであることが必要です。
 そのためには、技術者は、なぜその技術を開発したのか、それは自社の製品にどういう意味を持つかを考える守りの特許で自社技術を守る知財ポートフォリオ(特許群といってもいい)を構築するところから始め、その事業に即した知財活動を理解してから、自社では使用しない他社技術の延長線上にある、将来技術を予測した攻めの特許を取得することで、他社の設計自由度を阻害する活動に進んでいくというように、段階を踏むことが大切であると学びました。

 このように、私は事業や技術開発の担当者が考える事業戦略、技術開発戦略から、知財戦略を練り上げ、技術者と知財担当者との間に立ち、推し進めることができます。

プロフィール 詳細を見る


氏名:開示前


職歴

ブラザー工業

  • チームマネジャー(課長級) 2018/4 - 2020/1
  • チームマネジャー(課長級) 2012/10 - 2018/3
  • 主任研究員(係長級) 2012/4 - 2012/9
  • 主任研究員(係長級) 2003/4 - 2012/3
  • 主任研究員(係長級) 2000/4 - 2003/3
  • 主任研究員(係長級) 1998/10 - 2000/3
  • 主任 1998/4 - 1998/9
  • 主任 1994/10 - 1998/3
  • 主任 1992/4 - 1994/9
  • 主任 1986/6 - 1992/3
  • 1985/7 - 1986/5
  • 1985/4 - 1985/6

謝礼金額の目安

問い合わせ

取引の流れ


似ているトピック